ニッポンの思想
佐々木敦氏の『ニッポンの思想』(講談社現代新書)を読みました。1980年代から90年代を経てゼロ年代に至るまでの日本の思想について、その変遷を分かりやすく通覧した本です。
筆者は、自らのことを、カルチャー/サブカルチャーを主な対象として批評活動を行っている評論家であり、「ニッポンの思想」の担い手でもなければ専門的研究者でもないと述べていますが、リアルタイムで沢山の思想本を読み込んできたことがわかる力作だと思います。
まずは、浅田彰、中沢新一を中心に、いわゆるニュー・アカデミズムとは何だったのかを分析した後、同じく80年代の思想家を代表する蓮實重彦、柄谷行人の主張が解明されています。その上で、90年代の主役である福田和也、大塚英志、宮台真治の活動が紹介された後、ゼロ年代ではなぜ東浩紀の「ひとり勝ち」になったのかを検討しています。
同じ時代に生き、同じように彼らの思想に興味を持ってきた者として、佐々木氏とは異なる「読み方」をしてきた部分もありましたが、全体として、分析は明快で、なるほどと思わせる興味深いものでした。
「あとがき」によれば、佐々木氏自身、『未知との遭遇』というタイトルの思想書を準備中とのこと。今度は、思想の単なる「読者」としてではなく、思想家としてどんな力量を見せてくれるのか、今から楽しみです。
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